癒しのジョー・パス

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ジョー・パスのディスクが


いつの間にか増えていました。そのうち少なくとも1枚は古いLPです。
私は実家を含めて3カ所にCDを置いてるので、正確な枚数は数えてないのですが、10枚程度はあるでしょう。熱烈なファンではないけれど、買ったディスクにハズレはありませんでした。淡々と渋い音を奏でる、派手さのないギタリストです。
パスはおそらく、ジャズ・ギターのファンなら誰しも五指の内に上げるギタリストでしょう。私が音楽情報に触れることがほとんどなくなってからも、散発的にCDを買っていた数少ないミュージシャンの一人です。
パスはいつのまにか、彼のアルバムのシリーズタイトルである『ヴァーチュオーゾ』(Virtuoso) の別名で呼ばれていたようです。
学生の頃は、『トゥー・フォー・ザ・ロード』の『チェロキー』にみられる速弾きに憧れたことがあったのですが、社会人になってからビデオを見つけて購入したところ、オーソドックスで安定感のある演奏でした。
テクニックを誇示しているわけでは全然ないのに、これは並の奏者にはとても真似できないと思ったものです。アマチュアでもトレースはできるでしょう。でもパスの音楽にはほど遠い、みじめな音にしかならないだろうと思いました。

『フォー・ジャンゴ』は

わりと最近、私の持つジョー・パスCDの列に加わった1枚ですが、パス初期のアルバムであることを後になって知り、意外でした。成熟されていると感じていたので。
タイトルのジャンゴ・ラインハルトは、古い世代の多くのジャズ・ギタリストたちが、影響を受けたミュージシャンの名前の一人として挙げる、歴史的に有名なギタリストです。私はそんなに好きではないので、『フォー・ジャンゴ』にはほとんど期待していませんでした。
結果は大違い。『フォー・ジャンゴ』はその日から、寝床で聴く1枚の列に加わりました。やはり地味だけど、安定感、深さがあります。聴き手を飽きさせない変化にも富み、絶妙なバランスの中にもツボを押さえた音たちを淡々と繰り出します。
実に渋いのですが、軽妙さも持っています。決して重くはありません。
心のどこかでは「カッコいいな」と思いつつも、全体的には安心しきって聴ける、癒しの音楽です。
そうした印象は、珍しくもパスがバンドを組んでいるせいもあると思います。ギタ−2本とベース、ドラムスのカルテットです。サポートメンバーは名前を全然知らない人たちですが、相方のギターも素敵なほどに余計なことをしません。

ジョー・パス

独奏が多いのです。それも地味な渋さを助長していると思います。主張が無いかのように自然な、息の長いフレージングと絶妙なコード進行の流れるような音楽は、おそらく無私の境地で、静かだが確固とした自信に裏打ちされているのでしょう。
甘さは微塵もないけれど、包み込まれるような暖かさが伝わってきます。スケールが大きく、最も包容力のあるジャズ・ギタリストだと思います。
今は実家にいるので『フォー・ジャンゴ』は聴けません。先日買った『ヴァーチュオーゾ』の3を聴いてます。
ジョー・パスは、こういう風に歳をとりたいなぁと思わせるギタリストです。1994年、65歳で亡くなりました。生前にステージを聴きにいけば良かったと後悔している音楽家の一人です。

PS
本日は、急に友人の通夜に参列することになり、書きかけの軽い話題を仕上げてアップしました。
彼は、私の以前の赴任地で市会議員をやっているのですが、全くバックなしに仲間たちで議会に送り込んだ男で、清心清冽でエネルギッシュな人物でした。初めはゴミ・泡沫・問題外とまでバカにされていたのを、政治にも選挙にもズブの素人集団の手で、上位1割に入る好成績で当選させたのです。『地盤、看板、鞄』全てありませんでした。
その後、遠くに転勤した私には突然の訃報でしたが、その彼を病魔が浸食していたのです。私より若く、まだ40代の後半に入ったばかり、三期目の始まった矢先でした。壮絶な選挙戦だったようですが、それはそれ。予想外に容態が急変したとのことでした。
彼と共に闘ったことのある私としては、大変残念であり痛恨の極みです。地方政治の様相を見回しても、大きな人的損失だと断言できます。
昔の仲間たちに電話しましたが、「残念だ」と繰り返すことしかできませんでした。彼らは私よりずっと若いのです。みんな耐えており、気力もありました。
この3月に、彼から一緒に飲もうという電話がかかってきたのですが、都合で断りました。それが最後の会話でした。今となっては悔やまれますが、人生そんなものです。
自分より若い友人を失うのは辛いものです。
今夜は、みんなにも奥さんにもかける言葉はないけれど、絶対に毅然としているつもりです。

*1:☆ミラーです。インポートできないようなので手動でやりました。Muse というクラシック系SNSのブログの同じ日に同じ文を載せてます。ハンドルは『とっち〜』です。(2007.06.30コピー)
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